搭載しているアルゴリズムには、MPEX2／MPEX3／ZTX／ClearScale／quick Stretch の5つがあります。
　MPEX2は、Time Factoryバージョン1.x時代のものです。当時はマシンの性能にも限界があり、高品質の演算には物凄い長時間を要しました。互換性のために残されています。

　MPEX3はMPEX2の改良版です。メニューに、Voice／Poly／Transcribeなどがあります。Transcribe はテープ起しもしくは採譜のための半速再生です。
　ZTXは新しいアルゴリズムです。手始めにはこれを選択すればよいでしょう。メニューに、Voice／Duet／Standard／Smooth／Classics などがあります。

　ClearScaleはピッチ変換に、quickStretchは時間圧縮/伸長に、それぞれ重きをおいたアルゴリズムです。
　他にPreview／Good／Better／Bestなどのサブメニューがあります。Previewは速度重視の試聴用です。
　Natural pitch にチェックを入れると、フォルマントを自動補正します。
　品質と変換時間は一得一失の関係があります。高品質の変換には元時間の倍以上が掛かります (WAV ステレオファイル)。

● 可変速再生と音高
　アナログ再生においては、再生速度を変えると演奏時間と共に音高も変化します。CD再生機でも同じです。ただしデジタル出力は機種により、次の3通りがあります。
　�@標本化周波数が44.1kHzのまま
　�A標本化周波数が変化する
　�B出力せず

　再生速度と再生時間 (基準：60秒)、ピッチとの関係を上の表に示します。
　セント(cent) は音程を表す等比的な単位です。12音平均率の半音 ＝100セント、全音＝200セント、1オクターブ＝1,200セントとなります。
　1セントの周波数比 ＝ 1200√2 (2の1200乗根) ≒ 1.00057779　
　100セント(半音) の周波数比 ＝ 12√2 (2の12乗根) ≒ 1.059463
　ピッチを半音上げ/下げするには、再生速度を約+6/−5.6％にします。同じく全音上げ/下げするには、速度を約+12.2/−10.9％にします。

　任意の音程Ｄ(セント) を得るための再生速度Ｖ(％) を求める計算式は、次になります。
　Ｖ(％) = (2^(Ｄ/1200)-1) x 100 + 100

　再生速度を上げ/下げすると、音色や余韻も変わります。大幅な変化は不自然さを増します。TIME FACTORY IIでは、大きく変える際に、小さな変化を複数回に分けて加えることを推奨しています。
　例えば、150％を得たいときには、110.6682％の変換を4回重ねます。
　1.106682 ＝ 4√1.5 (1.5の4乗根)

　ドイツのZynaptiq (ザイナプティック) 社製。Mac OS X 10.6.8以降に対応。最新バージョンはv2.5.3。価格は約350ドル。無償のデモ版があります。

　映画『2001年宇宙の旅』では"HAL 9000"という名の人工知能が機能停止する時に、その「声」はだんだんゆっくりになり、音高もだんだん下がっていきます。
　TIME FACTORY IIではこのような加工はできません。このような変換が可能なものに、Serato社 (ニュージーランド) のPitch‘n Time Pro があります。